とげぬき地蔵で知られる
「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる、とげぬき地蔵に行って絵を描いてきました。
(JR山手線、都営地下鉄線巣鴨から徒歩5分。)

(2003.4.3 もう20年も前のことです。)
とげぬき地蔵の由来
江戸時代、武士の田村又四郎の妻が病に苦しみ死に瀕していた。又四郎が、夢枕に立った地蔵菩薩のお告げに従い、地蔵の姿を印じた紙1万枚を川に流すと、その効験あってか妻の病が回復したという。これが寺で配布する「御影」の始まりであるとされる。
その後、毛利家の女中が針を誤飲した際、地蔵菩薩の御影を飲み込んだところ針を吐き出すことができ、吐き出した御影に針が刺さっていたという伝承もあり、「とげぬき地蔵」の通称はこれに由来する。
(高岩寺:2023.8.20(日)22:39UTC「ウィキペディア日本語版)
托鉢のお坊さん
高岩寺の正面を描いていたら、柱のところに、菅笠をかぶり托鉢をされているお坊さんがいらっしゃった。笠をかぶったお坊さんを描いていたら、孫たちに何度も読み聞かせた「笠地蔵」の話を思い出しました。懐かしくて、「笠地蔵」にイラストを添えてみました。
笠地蔵(絵本)
むかし、貧しい老夫婦がポツンと住んでいた。明日は正月だというのに米一粒もない。
おばあさんはおじいさんに提案した。
「綛玉(かせだま)を以前作ったのだけど売れないかしら。」
おじいさんはぽんと手を叩きました。
「村に行って、かせだまを売ってみよう。売れたらモチが買えるぞ。」
おじいさんは籠にかせだまをいれ、野を越え山を越え村に急ぎました。
※かせだま=女の子が頭に飾る糸を丸めた円いもの。
かせだまはいらんかね
「かせだまはいらんかね。かせだま。」
とうとう日が暮れてしまいましたが一つも売れません。おじいさんは悲しくなりました。
「おばあさんにモチの一つも持って帰りたかったが。」
そこへ菅笠(すげがさ)を持った商人が通り、おじいさんの籠を見て足を止めました。
「そのきれいな玉ころは何じゃ。」
「これは女の子が頭につける飾りでかせだまと言うんじゃ」
とおじいさんは教えてあげました。
すげがさと交換
商人は言いました。「うちには5つ子の女の子が生まれての。それを土産にしたいんじゃが、銭コは無い。菅笠が一つも売れておらんのじゃ。そうだ、この菅笠と取り替えてもらえんだろうか。」
おじいさんの頭に、5つ子たちがかせだまをつけて喜ぶ様子が浮かびました。
「ええとも。ええとも。これを作った婆さんも喜ぶじゃろう。さあ籠ごとお持ちなさい。」
そうしておじいさんはかせだまを商人の菅笠と取り替えてあげました。
風が吹いて吹雪に変わりました。
「笠屋さん気をつけてな。」おじいさんは家路を急ぎました。
地蔵峠
地蔵峠を通りかかると6体の地蔵菩薩が雪で埋もれかかっています。おじいさんは、
「いつもお守りくださる地蔵様、どうか風邪をひかんでください。」
とていねいに頭の雪を払い、頭に菅笠をかぶせ、飛ばされないようにひもで結んであげました。
「ありゃー、一つ足らん。」
おじいさんは、自分のほっかむりの手ぬぐいをとると、端っこの小さな地蔵様にかけてあげました。
おじいさん、おかえりなさい
おじいさんは家に帰ると今までのことを申し訳なさそうにおばあさんにはなしました。
おばあさんは「こんなひどい吹雪におじいさんが無事帰れただけでわたしはうれしいですよ。」
二人とも何も食べていないので、ときどきお腹がグーグーなりました。
おじいさんが布団に入って寝たので、おばあさんも戸にかんぬきをかけて寝ることにしました。
夜中に地響き
夜中のことです。ドスンドスンと地響きが聞こえ、
(爺さんの家はどこだどこだ?どこだどこだ?)
という大勢の低く唸るような声が聞こえてきます。
「おじいさん、起きてください、怖いですよ。」
おばあさんは、おじいさんを揺り起こしましたが、往復8里(約30k)を歩いたおじいさんはぐっすり寝こんでしまって起きそうにありません。
おばあさんは、勇気をふるって立ち上がると、そっと隙間から外をのぞきました。
家の前で、菅笠を被った大勢の黒い影が何かやっています。「おー怖い。」おばあさんは、布団にもぐりこむと、おじいさんにしがみつき震えていました。
朝がやってきました
翌朝は良く晴れました。
おばあさんから昨夜のことを聞いておじいさんは、
「きっとわるい夢でも見たんじゃろう。可哀そうに。」と言って戸を開け外に出ました。
目の前に、山のように何か積まれてあります。
「おばあさん。見てごらん。はやく。はやく。」
おじいさんが上の雪を払らうと、米3俵、干し魚、野菜、果物などの新鮮な食べ物が山積みです。
『おじいさん。昨夜は菅笠をありがとう。おばあさんと良い正月を迎えてください。地蔵菩薩』
と書いたお札がのっていました。
ごほうび
おばあさんは地蔵坂のほうを向いて手を合わせました。
「おじいさんが良いことをしたから地蔵様がご褒美を下さったのですね。ありがとうございます。」
地蔵菩薩のおかげで、おじいさんとおばあさんは良いお正月を迎えることが出来ました。それからというもの、二人は地蔵様のお掃除とお供えを欠かしませんでした。おじいさんとおばあさんは、しあわせに、末永く、暮らしましたとさ。

読み聞かせ絵本を思い出して書いたつもりだったのですが、後でいろいろなバージョンの笠地蔵を読み返してみたら、ドラマの流れがかなりちがっていました。笠屋さんに五子がいるとか、おじいさんとおばあさんのセリフのやり取りなど、ぼく流に、短く読み易く変えたつもりですので、どうかお許しください。
(イラスト2023.7.7)
六地蔵とは
なお、六地蔵とは、手を合わせる者の身代わりとなって、六つの世界すべてを巡って救済を行うと考えられています。
天道(日光地蔵)・・・悩みや苦労が無く楽しいことに満ち溢れた世界。
人間道(除蓋障地蔵)・・人間が住む世界。苦しみもあるが仏教を修めることで輪廻を抜けられる
可能性のある世界。
修羅道(持地地蔵)・・戦いや争いが絶えない世界。
畜生道(宝院地蔵)・・牛や馬など畜生の世界。
餓鬼道(宝珠地蔵)・・飢えと渇きに苦しむ世界。
地獄道(檀陀地蔵)・・苦痛が絶えず続く恐ろしい世界。
※ ()は、地域やお寺によってお地蔵様の名前が異なることがあるそうです。
※小さなことでも、誰かのためになる良いことをしていると、心も穏やかになり、
「みんな仲良く」につなっがって行くのですね。
世の中、不景気で、生きてゆくのも大変な時代になりましたが、こんな時こそ、笠地蔵のおじいさんやおばあさんのように、優しい心が持てたらよいですね。