新宿門より入る
2003年6月11日は曇りだった。都会のオアシスとして親しまれている新宿御苑に来た。都合3度目である。
入口は、大木戸門、千駄ヶ谷門とあるが、今日は東京メトロ、新宿3丁目で降りたから、新宿門から入った。
日本庭園の方に歩いて行くと、「上の池」の森の上はるかかなたに、エンパイアステートビルに似た高層ビルが見えてきた。ありゃナンダ?今までなぜ気づかなかったのだろう。
新宿のエンパイアステートビル
調べたら、ドコモタワー(NTTドコモ代々木ビル)だとわかった。ニューヨークのエンパイアステートビルに似ているところから、いつしか、新宿のエンパイアステートビルと呼ばれるようになったという。
このビルの北側には直径15mの大時計が備え付けてあることを知った。NTTドコモ成立10周年を記念して設置されたという。時計屋さんのシチズンが作って、時針、秒針あわせて約1トンというが、想像もつかない重さだ。
時計はビルのかなり高いところに据え付けてある。はたして地上から見上げて、時間が読めるのだろうか。首が痛くなって一般人にはムリであろう。ひょっとしたら宇宙人専用かも知れない。
通信について高度な技術を交換しあう、そんな秘密の時計だとしたら、おもしろいな。
今日は平日で空いている。そんな、不思議なドコモタワーを借景に、その前に立つ樹木をスケッチすることにした。

いろいろな種類の庭園
新宿御苑には、風景式庭園、整形式庭園、日本庭園、玉藻池、母と子の森、などが配置され、東の端には温室がある。ご存じと思うが、それぞれの見どころを調べてみた。
風景式庭園
中央から東に広がった芝生地が風景式庭園だ。遠くまで見渡せる広場で、なんとも開放感がたまらない贅沢な場所だ。風景式庭園の中を、円を描いてずっと走り続けても、見晴らしが良いから、きっと飽きないだろうと思う。こんど、やってみよう。
真中に、自然のまま成長した巨樹があり、新宿御苑のシンボルツリーといわれる高さ30mを超えるユリノキが高くそびえている。
ユリノキは、5~6月にはユリのような、薄っすらオレンジ色をにじませた黄色い可憐な花をつける。
残念ながらぼくはまだ植物図鑑でしか見たことがない。一度でいいからその可憐なユリノキの花を見たいものだと思っている。
以前、トーハク(東京上野博物館)前のユリノキを眺めていたら、葉の形に特徴があることを近くにいたご婦人が教えてくれた。トーハク前での話だが、なるほど、ユリノキの葉をよく見ると、半纏(はんてん)や奴凧(やっこだこ)に似ていて、可愛らしくひょうきんなことを発見した。
整形式庭園
中央広場より、南東に歩いて行くとバラ花壇がある。バラは丁度見ごろで、いろいろな種類のバラが咲き誇っていた。そのバラ花壇を囲むように、外側に2列ずつ、計4列のプラタナスの並木が整然と植えられている。なるほど聞きなれない整形式庭園とは、この作庭からきているのだな、と納得した。
プラタナスはカエデの葉に似た鋸歯状の葉をしている。これは見たことがある。
日本庭園
日本庭園は「上の池」の流れに沿った、池泉回遊式の庭園である。あちこちに円い植え込みが点在し、灯篭があったりして、それらが周りの景色を引き立たせ、まさに日本庭園の醍醐味が味わえる場所である。
ここは古くは鴨場として使われていたところで、昭和のはじめに日本庭園に改装されたそうである。
旧御涼亭
日本庭園を「上の池」に沿って南に歩いていくと、旧御涼亭と呼ばれる、中国風の建物が見えてくる。
日本庭園に中国風はそぐわないと思うのだが、来てみると、これがなかなか悪くない。
屋根の赤と、建物を囲む木々の緑のバランスがいいのだろう。
旧御涼亭とは昭和天皇のご成婚を記念して、台湾在住邦人の有志から寄贈された建物である。
設計者の森山松之助氏は「水の中に立つご休息所」「夏の御散策の際に涼をとる建物」
と設計意図を語られている。
旧御涼亭は昭和2年に竣工された。
また、この建物は、台湾閣ともよばれ、本格的中国風建築といわれている。
気づかなかったが、旧御涼亭の絵を別々の日に描いていた。つまり旧御涼亭の絵が2枚出てきたのである。緑に囲まれた中国風の赤い屋根の構図が、よほど気に入ったのかもしれない。
赤の反対色は緑、だそうだ。色を引き立たせたいときは反対色を使うと効果があることを後で知った。
またひとつ、利口になった。
旧御涼亭 スケッチ1作目

この絵は2003.1.21に描いた。尾道で絵を描き始めてから約2か月を経過していた。筆が粗い。反省。
旧御涼亭 スケッチ2作目

この絵は2003.7とあるが、日にちははっきりしない。1作目にくらべ、色は淡いが、上手下手は別にして、なんとなく、水彩画になっている気がする。
玉藻池
玉藻池は、国民公園協会の紹介ページによると、内藤家の屋敷跡の面影を留める庭園だと書いてあった。
この辺りは、大名や旗本の名をつけた町名が残り、この地は、徳川家康が譜代の家臣内藤清成に与えた江戸屋敷と言われている。
現在、庭園の東にある、大木戸休憩所辺りには、当時、御殿が建てられ、池、山、築山を配置した景勝地「玉川園」が造られていた、といわれる。
その名残を残してか、緑と池に囲まれた玉藻池の近くにいると、癒され、とても幸せな気分になれたことを覚えている。ここに座って美味しい日本茶でも飲んだらきっと動きたくなくなるだろう。
母と子の森
都会に住む子供たちが、自然との触れ合いを楽しみ、豊かな感性を育むために、昭和60年(1985年)に造られた自然観察フィールド、と国民公園協会に書いてあった。
車の往来が激しく、ほこりっぽい遊び場所もない子供たちが、この、母と子の森で、身近な木々や草花、昆虫などと触れ合えたらどんなに幸せだろうか、まさに天国に値するとはこのことであろう。
温室
国民公園協会によると、明治8年(1875)に建てられたガラス張りの温室がはじまりで、平成24年
(2012年)絶滅危惧種の保存・展示を行う環境配慮型の温室になった、と書かれていた。
熱帯・亜熱帯の植物を中心に、約2700種を栽培しているというから、再度ゆっくり見学したいものだ。
エントランス奥通路には2023年8月20日まで食虫植物を開催しているそうだ。
大きな捕虫袋を持つタイプ、粘液などで虫をくっつけるタイプなど、いろいろあるそうで、おもしろそう。期間中にもう一度来たい。それから、シャンプージンジャーという熱帯植物があるらしい。
ハワイの一部の人はこれを絞って頭や体を洗るというから、どんな植物か興味をそそられる。
開催期間ははっきりしないので、行かれる方は、新宿御苑に直接お問い合わせ下さいますように。
参考資料 新宿御苑 03–3350-0151
(財)国民公園協会 03-3341-1461