飛鳥時代と聞いただけで、せひ一度行きたいと思っていた。
2005.5.9 橿原神宮前駅から、持参した折りたたみ自転車に乗って予約した甘樫の丘(あまかしのおか)近くの民宿に向かった。鳥が鳴き飛鳥川が流れ、のどかな、すばらしい田園風景が広がっている。泊り客はぼく一人。(食事も料理も優遇していただいた。)まだ明るかったがスケッチは翌日にして、あちこち自転車で見物することにした。
亀石さん、竜宮城まで連れてって
南に行くと亀石があった。ユニークな顔つきは明日香村のシンボルになっているという。
長さ3.6M、幅2.1M.高さ1.8Mと、とにかく大きい。
眠っているように見える。
甲羅を叩いて「浦島太郎が遊んだ竜宮城まで乗せて行ってください」と言ったら眠りを覚まして連れて行ってくれるだろうか、とバカなことを想像した。

海で迷子になったら大変だから、振り落とされないように、シートベルトまでついている。
遊泳中、むかし、むかし、うらしまは♪の、竜宮城音楽隊によるBGMが流れる。
帰りのお土産は、玉手箱だと考えるとやっぱり不安になる。なにか美味しいものの方がいい。
鬼の俎板と雪隠
また南に行くと鬼の俎板(まないた)、鬼の雪隠(せっちん)があった。霧で惑わし人を料理して食べたという。さてさて、人間の味は美味しかったろうか。

まないたの大きさ⇒長さ4.5M×幅2.7M×厚さ1M
せっちんの大きさ⇒内幅1.5M×高さ1.3M
瞑想おじさん
飛鳥駅に近いところまで行くと欽明天皇陵があり、裏手の藪に奇妙な石像を四つ見つけた。日本人観光客に交じり外国人もカメラのシャッターを切っているが、女、山王権現、僧、男と名付けられた石像を代わる代わる見ているうちに、僧の前で足が止まった。この僧はどう見ても微笑顔で瞑想しているように見える。さて、このお坊さん、目を開けたら開口一番何を言うであろうか、吹き出しをつけてみた。

ヨーガの世界では瞑想は潜在意識の底から宇宙エネルギーにつながると言われている。ぼくもたまに家で瞑想するが、瞑想後、心が軽くなったり、ヒラメキがあったりするから不思議だ。
甘樫丘(あまかしのおか)
翌日、甘樫丘-あまかしのおか(147M)にのぼって、大和三山を描くことが出来た。
な、なんと、すばらしい眺めだ。

北に耳成山(みみなしやま)139M
西に畝傍山(うねびやま)198M
東に天の香具山(あまのかぐやま)152M が一望できた。
天の香具山
飛鳥時代のひとたちも、この甘樫丘に立ち、同じように見えたはずだ。ぼくは妙な興奮を覚えた。
飛鳥人たちは、ここからあちこち眺めて、何に想いをめぐらしたのだろうか。
百人一首に詠まれた有名な歌がある。
春過ぎて 夏きにけらし 白たえの 衣ほすてふ 天の香具山
中大兄皇子(天智天皇の娘)持統天皇によって詠まれた歌である。
(意味)
春が過ぎて夏がやってきたらしい。夏になると真っ白な衣を干すというあれが天の香具山なのですね。
(天の香具山の謂れ(いわれ)は、天から人が降ってきたので天の香具山と呼ばれるようになったとか。)
ぼくは、天の香具山に歌をダブらせているうちに、緑に覆われた天の香具山の中腹に、風にそよがせながら白い衣を干す平民を、小高い甘樫丘の上から眺めて、がやがや息抜きしている貴族や女官たちの姿を想像してしまった。
飛鳥川
甘樫丘のそばには飛鳥川が流れている。飛鳥川は小さな川だが見ていると、まるで飛鳥時代に瞬間移動したような錯覚を覚えた。
飛鳥川を詠んだ古い歌も残っている。
明日香川 水行きまさり いや日異(ひけ)に 恋(こひ)のまさらば ありかつましじ
(万葉集11巻作者不詳)
(意味)
明日香川の水かさが増すように日ごとにあの人に恋する気持ち増すばかり。辛い。どうしよう。
作者はどんな人に想いを馳せたのであろうか。恋わずらいは病気ではないから治す薬はない。
作者の悶々と悩む恋心が伝わってくる。

昔の故郷
三日目は歴史ある飛鳥寺、橘寺、岡寺を自転車で巡った。
とにかく見るところがたくさんありすぎる。高松塚古墳、石舞台古墳、キトラ古墳は、時間をかけてもう一度回りたい。
飛鳥人になりたい
半年位でいい。明日香村に安い家を借り、百人一首を1冊持ってきて、昼はぶらぶら歩き、夜は月見でも出来たらどんなに幸せだろう。
昔は人口も少なかった。ぼくの遠い先祖の誰かさんと血が繋がっているかも知れないと思うと、なんだか第二の故郷のように思えてならないのである。